
クリニックの受付にポスターを提示しましたが皆様お気付きになりましたか?
数年前から元宝塚歌劇団の檀れいさんが「GFR値が59以下の方はお医者さんに相談をして下さい」というコマーシャルが流れています。綺麗で美人な女優さんに言われるとそれこそ気になりますよね。
CKD(慢性腎臓病)とは、何らかの原因で糸球体濾過量(これをGFRと呼びます)が60未満の状態が3ヶ月以上続いた状態のことで、この状態を放置し悪化させると、最終的には人工透析を必要とする「末期腎不全」という状態に陥ります。さらに心筋梗塞や狭心症、脳卒中など、心血管障害をより引き起こしやすくなるのです。CKDは尿検査と血液検査で比較的簡単に診断が可能ですが、基本的には自覚症状がないのでどうしても軽視されがちです。腎臓が専門ではない先生はCKDや腎臓機能に対する認識が低い方が多いのが現状で。このことに危機感を抱いた日本腎臓病協会が警鐘を鳴らす意味で今回の 檀れい さんが登場した次第です。
現在日本国内のCKDの患者数は非常に増加しています。それは高血圧や糖尿病、肥満などのいわゆる生活習慣病と深く関わっているからです。腎臓は基本的には血管の塊のような臓器で、心臓から送り出される血液の20%以上(1日200リットルもの血液)が休むことなく流れています。腎臓はその血液を濾過し、老廃物を尿として体外に排出し、体内を綺麗に浄化しています。同時に体にとって必要な成分はきちんと再吸収を行っており、いまでいう「リサイクル」「リユース」の一面も持ち合わせています。
そのほかにも、体液の量や浸透圧、血圧の調整を行ったり、ナトリウムやカリウム、カルシウムといったミネラルバランスの調整、さらには体内が弱アルカリ性の環境をキープできるように働いたり、貧血や骨の健康など様々なホルモンを分泌したりと人間の体の健康を維持活性化するための多くの働きを担っています。
CKDの治療は生活習慣病の治療が基本です。血圧やコレステロールが高ければこれらを下げる、糖尿病があればきちんとコントロールする。CKDに対応する「フォシーガ」という薬剤もありますが、まずは高血圧などの基礎疾患を適切に治療することが何よりも重要です。CKDが早期であれば基礎疾患の治療でCKDの悪化を避けることが出来ます。
しかしながら対応が遅れると透析を導入することになります。残念ながら現在日本に45万人いると言われている透析患者のほとんどに生活習慣病が関与していると報告されています。当院では定期検査などでGFRが低下していた場合、しっかりとご説明するよう心がけています。