
韓国の首都、ソウルには食品を扱う市場がいくつもあります。商品が山積みされた露店が雑然と並び、とても熱気にあふれています。漢方食材のみを扱った市場(京東市場:キョンドンシジャン)もあり、その界隈は漢方独特の香りで町全体が包み込まれているようです。中でも「陳皮(ちんぴ)」はとても良い香りがします。「陳皮」とは、みかんの皮を日干しにして乾燥させた物です。胃腸の働きを高め、気の巡りを整え、さらには風邪の予防や咳や痰を治す効果もあり、漢方治療には欠かせない生薬です。「こたつでミカン」が日本では冬の風物詩としてすっかり定着していますが、ミカンは日本固有の果物ではなく、実は今から1200年前に中国から伝来したと言われています。最近では何とその薬効から欧米でも脚光を浴びています。ミカンと言えばもちろんビタミンCが有名ですが、その含有量はレモンやキウイ、イチゴに比べるとかなり少なく、約3割に満たないとのことです。ちょっと意外ですよね。
しかしミカンにはビタミン以外にも健康増進に有効な成分がいくつも含まれています。
ミカンを食べると甘酸っぱい味がすると思いますが、その酸っぱさの正体は「クエン酸」によるものです。「クエン酸」は体内に蓄積した乳酸などの物質を処理し疲労回復にとても有効です。さらに最近の研究では「βクリプトキサンチン」という抗癌作用のある物質が含まれていることが証明されたようです。この物質は発がん物質から正常細胞を守る働きがあるようで、今後さらなる研究成果が期待されます。
もしミカンを食べるときに白いすじをきれいに取り除いているようでしたら、早速今日からそれはやめましょう。なぜならそのすじの中にもペクチンという食物繊維と、ヘスペリジンというビタミンP物質が含まれているからです。これらは血管を丈夫にしたり、血圧上昇を防ぐ効果があるようです。ミカンは皮ごと、すじごと食しましょう。
また、陳皮にはノビレチンという物質も含まれており、これは喘息の体質改善やC型肝炎の肝機能回復に有効との報告があります。恐るべしミカン・・・といったところでしょうか。
韓国のある地方では「ミカンが色づくと医者が青くなる」と古くから言われているようです。きっとミカンの薬効を経験的に知っていたのでしょう。
甘酸っぱいミカンを1つと言わず、2個、3個・・・多分私は青くなどならないので(笑)季節の恵みを存分に味わって下さい。
陳皮が配合されている漢方薬は、有名なところで「六君子湯(りっくんしとう)」「釣藤散(ちょうとうさん)」「香蘇散(こうそさん)」などがあります。