
乾燥する季節ということもあり「皮脂欠乏性皮膚炎」という、乾燥に伴う湿疹や痒みで来院する方がとても多いです。特に皮膚の働きがまだ未熟な乳児・幼児のケースが目立ちます。
最近では保湿を中心としたスキンケアが将来のアトピー性皮膚炎など、アレルギー疾患の発症予防に効果的との研究報告があり、注目されています。スキンケアの究極の目的は皮膚のバリア機能を高めることです。健康な皮膚というのは皮膚表面にある皮脂腺が、体外からの細菌やウイルス、アレルギー物質などの侵入を防ぎます。併せて体内の水分の蒸発を抑えています。
このバリア機能が弱まると皮膚に炎症や湿疹が出現します。皮膚をこするように強く洗わない、乾燥しないうちに保湿剤を塗るというのが基本です。
炎症があれば状況に応じステロイド軟膏を外用するのも基本です。比較的早期よりこのスキンケアをしっかり実施することが将来のアトピー性皮膚炎の予防につながります。
国立成育医療センターの研究によると、家族にアトピー性皮膚炎の方がいる新生児を対象に毎日全身に保湿剤を塗る子と、皮膚の乾燥した部分にだけ保湿剤を塗る子に分けて経過を見たところ、全身に保湿した子の方がそうでない子に比べてアトピーの発症率が32%低かったようです。
保湿剤に加え、湿疹の場所にステロイドを外用し炎症・湿疹・痒みを抑えることも同時に実施したようです。これは皮膚疾患の標準的治療と説明しております。中にはそのイメージからか「ステロイドは塗りたくない」と訴える方もおりますが、現時点では学会も推奨するスタンダードな治療なのでご理解ください。
また、必要以上に厚着をすると、皮膚温度が高まり痒みを助長します。「子供は風の子」というぐらいなので多少気温が低くても、気持ち薄着の方が皮膚や体は鍛錬されます。丈夫で健康な子に育ってほしければ、ぜひ過保護にしないということも少しは意識してください。
これは小児に限らず大人も同じで、様々な理由で多くの方の皮膚のバリア機能が低下し、今の時期は湿疹が出現しやすいです。