
まだまだ暑い日が続きますが、暦の上では今日から9月です。新学期も始まり気持ちを新たに、と行きたいところですが、日本全国暑くてそれどころではないようです。
事実これからの時期はより注意を要します。本当に暑い時期は気も張っていて何とか乗り越えたり出来るのですが、少しピークが過ぎたお盆明けから秋の彼岸頃まで、蓄積した夏の疲れが現れやすく、体調を崩して受診される方が例年多いです。実際「コロナ感染症」の方は毎日必ず受診されますし、夏の疲れは「胃腸」に来るので、「急性胃腸炎」の方も多いです。
それにしても「甲子園」は感動的でした。神奈川県代表の「横浜高校」も頑張りましたが、今年は接戦が多かったですね。今熱いのは「バレーボール」でしょうか。石川兄弟や高橋蘭選手などなど・・・。夏の「暑さ」ではなく、スポーツの「熱さ」は大歓迎です。
「ドキドキ」しながら、テレビでスポーツ観戦しています。
☆その「ドキドキ」はもしかして「心房細動」かも・・・
スポーツ観戦時の「ドキドキ」ならいいですが、そうは言っていられない「ドキドキ」があります。
心臓は左右の心房、左右の心室の4つの部屋に分かれています。成人の正常な心拍は1分間に概ね60~90回。休むことなく規則正しく血液を送り出していますが、何らかの原因でこのリズムが乱れるのが不整脈です。不整脈にはいくつか種類があり、実は放置してよい不整脈が最も多いのですが、臨床的に治療の対象となる不整脈の中で頻度が高いのが、「心房細動」です。「心房細動」を発症すると脈が速くなり、かつリズムが乱れます。動悸、息切れ、めまいなどの自覚症状が現れることが多いですが、少し厄介なのが症状のない「無症候性心房細動」というものです。
「心房細動」は主に左心房にある肺静脈の開口部付近に、異常な電気の信号が多発発生して、正しい心拍が刻めなくなります。その為に左心房、特に左心耳という部分に血液が滞るようになり、すると血栓と呼ばれる血液の塊が生じます。何かの拍子にこの血栓が心臓から排出され、他の臓器、特に脳の血管に入り込んで詰まってしまう、これが「心原性脳塞栓症」と呼ばれるものです。先日亡くなったミスタージャイアンツ長嶋茂雄氏がまさに発症した病気です。
心原性脳塞栓症は、血栓が大きいため、詰まると脳の広範囲に渡って血流が止まることになり、脳神経細胞が大きなダメージを受けるので、おおよそ約半分の50%の方が亡くなるか、運良く救命されても寝たきり状態や麻痺などの後遺症が残ります。「心房細動」を治療しないで放置すると、ある報告では日本人の場合、高率に脳塞栓の発症を来たすので、全死亡者の約2%に上ると報告されています。
この脳塞栓症を防ぐことが「心房細動」の治療の最も大きな目標です。
治療は不整脈を改善する抗不整脈薬と心臓の中で血栓を作りにくくする抗凝固薬を内服するのが基本です。内服薬は長年ワーファリンという薬剤が主流でしたが、効き方や副作用の出方に個人差が大きく、また他の薬や食品との飲み合わせ、食べ合わせの制限もありますので、近年は副作用が少ない最新の薬剤も数多く登場しています。
しかし最近は薬剤に頼らないカテーテル治療が注目されています。特殊なカテーテルを用いて4本ある肺静脈近くの心臓の筋肉、つまり心筋を焼灼し、異常な電気信号が心臓全体に伝わらないようにする「心臓焼灼術(カテーテルアブレーション)」を実施するのですが、入院も数日で済むことがほとんどなので、負担も少なく再発予防にもなるので条件を満たせばこの治療がお勧めです。日赤や湘南大磯病院、東海大学などは治療成績も秀でているようで、当院の患者さんも紹介し治療を受けています。
発症が気付きにくい「無症候性心房細動」タイプは、まさに自覚症状がないので厄介です。50歳を超えたら時々自分の脈拍をチェックする習慣を持ちましょう。そうすれば早期に発見することも可能で、命に関わる脳塞栓を事前に予防することが出来ます。